介護職員は、日々、利用者の支援を通して多くの規則やガイドラインに従っています。そこでよく耳にする言葉が「法令遵守」と「コンプライアンス」ですが、これらは同じ意味ではありません。では、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。
まず「法令遵守」ですが、これは文字通り、法律や条令など国が定めるルールを守ることを指します。介護業界でいうと、介護保険法や労働基準法など、介護サービスを提供する上で絶対に守らなければならない基準です。違反すると罰則が科せられるため、介護事業所としては厳密にこれを遵守する必要があります。
一方で「コンプライアンス」とは、法令遵守を含めて、倫理的な行動や社会のルールを守るというより広い概念です。これは法律に書かれていないことも含むため、単にルールを守る以上の行動が求められます。例えば、利用者や家族との信頼関係を大切にすることや、個人の尊厳を保つことなど、法律で定められていないけれども、社会的に正しいとされる行動を意識することが含まれます。
介護業界では、利用者一人ひとりの尊厳やプライバシーを守ること、また職員間でのコミュニケーションを通じてより良いサービスを提供することなど、コンプライアンスを意識することが大切にされています。これらは、時には文書には書かれていない、心からのケアを意味します。
つまり、介護業界で働く上で、法令遵守は仕事をする上での最低限のルールを守ること、コンプライアンスはそれに加えて、社会的責任や倫理的な観点からよりよい介護サービスを目指すことを意味しています。どちらも非常に重要で、介護の現場で質の高いサービスを提供するためには、この2つの違いを理解し、バランス良く取り入れていくことが求められます。